まるで、いつも陽気なオジーを歓迎するかのように、昨日とはうって変わって晴天・夏日に恵まれた幕張。とうとう日本で Black Sabbath が見れるとあって、会場に向かう表情はどれも期待に胸を膨らませていた。2日目は前日の爆発的なエネルギーとは対照的に、内面から静かに焼きつくしてくれる面々がお目見えする。
この日の OpeningAct を務めたのは、妖艶な雰囲気に反したパワフルなヴォーカルが魅惑的な HEAD PHONES PRESIDENT (PURPLE STAGE)と、西洋×東洋ロックを織り交ぜたクールな fade (BLACK STAGE) が切り込んできた。
幾多のライブを重ね coldrain が磨きのかかったメロディック・ラウド [The Revelation] で観客の心をつかみ、メタルシーンで知らない人はいないであろう ANTHEM が [ONSLAUGHT] で日本メタルの真髄を魅せると海外でも定評のある MUCC の [G.G.] でムッカーだけではなく様子見オーディエンスを取り込んでしまう。
少しずつ飲まれていく奇妙なハイテンションの中、過去に唯一日本人として Ozzfest に出演した経験のあるTAKESHI 率いる AA= が [DIGItoTALism] [sTEP COde] のデジコアの攻撃的リズム強烈なメッセージを発信し、更なる深みに落とし込んでいく。
そこへ、まるで脳みそを休息させてくれるかのようにド派手な懐メタル衣装で STEEL PANTHER がやってきた!MC では終始笑いを誘うが、[Party All Day] など楽曲クオリティは本物だ。
すっかり会場中を華やかに染めくれた彼らの後を、これまた奇抜なインパクトで人間椅子が登場!鯉口リーゼントに袴姿、白塗りのお坊さんという出で立ち。何ともヘヴィなギターにベースが絡みつくようにうねる戦慄サウンドで、興味をそそられ足を止めた者たちは度肝を抜かれてしまう。[針の山] では物珍しさで見ていた観客も、ハイレベルなサウンドに絶大な賞賛を送った。
後半戦に突入し登場したのは、昨夜ヘッドライナーを務めたばかりの Slipknot ボーカル/コリィと、
ギタリスト/ジェームズが活動する stone sour。ステージ狭しと走り回るコリィは [Absolute Zero] で熱唱したかと思えば [RU 486] では弾き語りで会場を酔わせ、最後は大合唱となりメッセを一つにしてくれた。
夢のような時間が駆け足で過ぎ去る中、日本人のトリを務める DIR EN GREY。
不動の地位を確立した日本を代表するバンド DIR EN GREY は、独特の世界を貫き Ozzfest を暗黒の世界に変えてしまう。
ステージ背面を使って映し出される闇の世界、それに呼応するような [DIFFERENT SENSE]。
ファルセット、デスボイス、シャウトと多彩に歌い分ける京が [羅刹国] [冷血なりせば] で痛みをえぐり出すかのように美しく舞い、そのスケールに圧倒されてしまう。
しっとりと夕闇が忍び始めた頃、TOOL が BLACK STAGE のラストを飾った。
底抜けにダウナーで異質な世界観をもたらす彼らもまた、独自のステージパフォーマンスで場内を震撼させた。巨大モニターに映し出されるヒステリックな映像と照明が目を、次々と変調する解読不能なサウンドが耳に、極上の無を提供してくれた。
唯一無二の孤高なバンド、TOOL の中毒性にしばし呆然となった人は少なくないだろう。
TOOL の余韻を残したまま、会場内に突如サイレンが鳴り響く!
オジーの声と共に、誰もが待ち焦がれた伝説のバンド、オジー率いる Black Sabbath がいよいよ登場した!!怒号とも言える大歓声の中、政治的なメッセージが込められた映像をバックドロップに [War Pigs] がスタート。
とにかく驚愕したのが、60代半ばとは思えないオジー・オズボーンの声量だ。ステージの上で一時も止まらず、絶えず観客を盛り上げる姿は絶好調そのもの。[Into the Void] [Under the Sun] でトニー・アイオミのキラー・チューンが炸裂し、[Black Sabbath] のオドロオドロしい空気で黒魔術でも始まるかと思えば曲が変拍した瞬間、爆発したように会場中が一斉にジャンプ。メッセの床が揺れる揺れる。
[N.I.B] ではギーザー・バトラーがベースソロで全開のヘヴィリフを披露し、オジーがステージ前方で煽れば観客は全力で応え、手を叩けば手拍子が巻き起こる大熱狂っぷりにフロントエリアは常に酸欠状態。
クラウドサーフの波が途絶える事なく、終盤戦では迫力のドラムソロで空気がビリビリ震えるほどの賞賛の拍手に包まれる。ドラムソロからそのまま [IRON MAN] [GOD IS DEAD] へとつなぎ [Children of the Grave] で本編のラストを迎えた。
アンコールはやはりこの曲 [Paranoid] で、これでもかと場内を沸かせると「また来年くるよ!」と言い残し、ロックのレジェンドたちは去っていった。
日本初開催となった Ozzfest JAPAN 2013 は、結成から40年を迎えてもなお HR/HM界に多大な影響を与えるBlack Sabbath を通じ、音楽を楽しむことにジャンルは関係ないという事を教えてくれた。
また来年も Black Sabbath に会いたい。そう願い興奮冷めやらぬ中、2日間の祭典が幕を閉じた。